Fraunhofer 回折

X線結晶学が扱うのは、Fraunhofer 回折の領域である。その導出について、(自分にとって)直感的かつ初等的な説明が見当たらず、長年モヤモヤしていたのだが、先日(昨年10月ごろ)腑に落ちたので書いておく。

座標 O(0, 0) と P(d, 0) に2つの原子があるとする。ここからの散乱波が、検出器距離 L, 角度\thetaにある点 D(L\tan\theta, L)でどう合成されるかを考える。#図を入れる!

Fraunhofer 回折では、検出器が無限遠にあって、2つの原子から検出点までは並行である(OD \parallel PD) と考える。この場合の光路差は、明らかに d\sin\theta である。

平行軸近似を入れないで、真面目に光路差を求めると、
\begin{eqnarray}OD - PD &=& \frac{L}{\cos\theta} - \sqrt{L^2 + (L\tan\theta -d)^2)} \\ &=& \frac{L}{\cos\theta} - \sqrt{\frac{L^2}{\cos^2\theta} - 2Ld\tan\theta + d^2} \\ &=& \frac{L}{\cos\theta}  - \frac{1}{\cos\theta}\sqrt{L^2 - 2Ld\cos\theta\sin\theta + d^2\cos^2\theta}\end{eqnarray}
平方完成して、
\begin{eqnarray}OD - PD &=& \frac{L}{\cos\theta}  - \frac{1}{\cos\theta}\sqrt{(L- d\cos\theta\sin\theta)^2 + d^2\cos^2\theta - d^2\cos^2\theta\sin^2\theta} \\ &=& \frac{L}{\cos\theta} - \frac{1}{\cos\theta}(L - d\cos\theta\sin\theta + O(d^2)) \\ &=& d\sin\theta + O(d^2)\end{eqnarray}
となり、d の一次まで一致する。

Taylor 展開の部分、カッコの中にも d が含まれていて嫌な形だが、これで合っているはず。というのは\sqrt{h^2 + x} = h + \frac{x}{2h} + O(x^2) であるが、上では x が d^2 のオーダーなので、2つ目の項の時点で既に O(d^2)。したがって、d 一次の項は h の部分からしか出現しない。違ってたら教えてください。

もちろん、d が L に比べてどのくらい小さければいいのかとか真面目に考察したければ、ちゃんとした証明を読む必要がある。