シリアル結晶学のための post-refinement について

1年前に Post-refinement についての覚え書き - biochem_fan's note を書いた。その後、シリアル結晶学への応用が急速に進み、2015年に至って、ついに効果が立証された。これらの進展について説明しよう。

Rossmann, M. G., et al. "Processing and post-refinement of oscillation camera data." Journal of Applied Crystallography 12.6 (1979): 570-581 にもあるように、post-refinement のアイデア自体は決して新しくない。当時は凍結結晶からのデータ測定技術がなく、常温でデータ収集を行っていた。放射線損傷に弱いウィルス結晶からは、1,2フレームしか撮影できず、ほとんどの反射が partial であった。それを補完する方法として post-refinement が提案されたのである。

シリアル結晶学、とくに XFEL では #

post-refinement は、振動写真法による方位決めの問題も解決する。振動写真法では、1つのフレームは一定幅の振動角に対応するため、フレームに載っている回折点が、厳密にどの角度で回折条件を満たしたか知ることができない。結晶方位の3自由度のうち、X線ビームを軸にする回転は回折点を検出器上で同じように回転させるが、それに垂直な軸まわりの回転は検出器上での回折点位置を変化させず、回折が起きる回転角のみを変化させる。そのため、prediction と観測位置のズレを最小化する目的関数では、結晶方位のうち2自由度が under-determined となってしまう。fine-slice を行えば、回折が起こった角度(spindle position) をより精密に知ることができるので、この問題は軽減されるが、依然として、ビーム周りの回転(ピクセルサイズの半分が下限となる)ほどの精度は出ない。

#方位決定の話

#Delta-psi restraint, Ewald offset の話