反射の多重度 multiplicity

反射の多重度 multiplicity について確認した。これは、空間群と指数の関数である。

ある反射の multiplicity とは、逆空間の対称性によってその反射に重なる反射がいくつあるかを言う。逆に言うと、その反射に対称操作を適用した時、何通りの逆格子点に移るかである。cctbx のソースコード cctbx/sgtbx/space_group.h では、

The multiplicity is defined as the number of symmetricallyequivalent but distinct reflections.

と定義されている。http://pd.chem.ucl.ac.uk/pdnn/symm2/multj.htm も参考になった。

例えば、b軸に二回軸がある P2 (monoclinic) の場合、(x, y, z)→(-x, y, -z) という回転操作に対応して、逆空間でも (h, k, l) と (-h, k, -l) は同じ強度を持つ。さらに Friedel の法則により強度について(位相は180度ズレる!)逆空間は点対称でもあるから、(-h, -k, -l) と (h, -k, l) も同じ強度を持つ。よって多重度は4である。

群の言葉でいうと、空間群は 点群に並進操作(センタリング含む)を付け足したものであるが、逆空間の強度の対称性は、点群に原点での反転(-1)を付け足したものである。これが Laue 群であり、multiplicity とは、Laue 群の位数にほかならない。 #で、合ってますよね??

さて、k = 0 の場合を考えると、(h, 0, l) と (-h, 0, -l) の2つしか取れない。(h, 0, l) に Friedel の法則を適用しても (-h, 0, -l) になるだけである。したがって、centric な反射では多重度が acentric な場合の半分になり、ここでは2になる。異常分散効果を考慮するときも Friedel の法則が成り立たないから多重度は2である。