2023-07-05 (Wed)

Crystal Growth & Design "Structure Elucidation of Olanzapine Molecular Salts by Combining Mechanochemistry and Micro-Electron Diffraction"

Three structures were solved from a grid. See the scatter plot of cell parameters in Fig. 1 (added after preprint). As usual, raw diffraction images are available at XRDa.

The diffraction pattern in the graphical abstract is an unrelated "artistic" illustration, according to the author who drew it.

SerialEM macros and guides for data collection and processing scripts with DIALS are in https://github.com/GKLabIPR/MicroED.

温度による固体の相転移について

ふと、温度によって固体-固体相転移をする「原理」が気になりはじめた。 相転移するということは自由エネルギーが極小となる状態が変わるということであり、温度に依存するということはエンタルピーではなくエントロピーが効いているはずだ。

このテキストでは黄銅の相転移と水晶の α から β への相転移(quartz inversion)が紹介されている。前者は温度が上がると各サイトの原子がシャッフルされて無秩序化するというものであり、いかにもエントロピー効果だと分かりやすい。一方、後者はどういうことか。結合角度など構造が変わるわけだが、低温では(= エンタルピー的には)不安定な構造を高温で「支えている」のは何だろう。

これについて専門家に訊いたところ、「フォノンのソフト化」という概念を教えてもらった。このキーワードでいろいろ調べたり質問したりして得たのが次のような理解だが、あっているか自信はないので、コメントしてもらえるとありがたい。

高温では原子位置のゆらぎが激しいが、低温ではエンタルピー的に一番安定な場所にはまりこんでしまう。結晶構造解析で見えるのは時間的・空間的な平均構造であり、エンタルピー的に一番安定な位置とは限らない。例えばある原子が右や左にある二状態があって等しく安定であり、真ん中の位置は遷移状態でエネルギー的に不利だとする。高温では右と左に行ったり来たり振動していて、構造解析をすると左右の位置に 0.5 の occupancy で対称に見える、あるいは振動の距離と分解能次第では2つのピークが重なって本来不安定なはずの中央に原子があるように見える。低温になると行ったり来たりする熱エネルギーがなくなり遷移状態を超えられなくなるので、全部右とか全部左、あるいは右左が交互といった新たな構造を取るー―というイメージだろうか?

阪大化学熱学レポート 「ソフトモードを有する秩序・無秩序型相転移とその重水素効果:シュウ酸水素アンモニウム(1/2)水和物」 を一例として読んだ。

ホログラフィーは三次元か二次元か

ホログラフィーは平面から立体を再生しているように見える。これを自分は次のように考えて分かった気になっていた。

室内にいる人が窓を通して外の景色を眺めているとき、部屋の中で動けば、窓の外に見える景色も変わる。しかし人がどこにいようが、窓の二次元平面に存在する光の場は同じはずである。したがって、この二次元平面における光の場を位相も含めて再現すれば、実際には部屋の外には何もなかったとしても、部屋の中にいる人には外が同じように「見える」。位相があるから、窓から色々な方向に ray が射出されるわけだ。

実際、蛍光 X 線ホログラフィーの文献を見ていたら、二次元のスキャンだけで三次元電子密度マップを再構成しているものがあったりする。かと思いきや、三次元でスキャンしてからトモグラフィーの要領で三次元再構成しているものもあり、よく分からなくなってきた。

  • 光学 「X線ホログラフィー」
    複数のホログラムを組み合わせてトモグラフィーの原理で三次元再構成すると書いてあったかと思うと、いろいろな角度からの撮影で三次元情報を得られるようなことも書いてあって(SrTiO3 の例)、よく分からない……

  • 光学 「ホログラフィーって本当に三次元?」
    ホログラフィーといえ、一つの方向からの撮影では(Ewald 球?)表面という三次元空間中の二次元球面の情報しか取得できないと明言されている。結晶学と違って位相を得ることはできるけど。ただ、長波長だから奥行方向の情報もある程度入っているってことなのかな。

  • "How to understand holography and hologram"
    これを見ると、二次元平面内で振幅と位相が完全に分かれば波動方程式の性質から内部の情報も全部決まるようなことが書いてある……

もやもやする……

読んだ