CCP4 Study Weekend 2014 の録画が公開されている。プログラムはこちら。それを見て、Twitter に散発的に投下したメモをまとめておく。
土曜日第3セッション (Session 3 - New Mounts)
Method: Integration of complementary instrumentation in high throughput beamlines (Florent Cipriani)
40分くらいから。EMBL の CrystalDirect システム。
薄いフィルム上で蒸気拡散して結晶化。そのフィルムをレーザで切り抜いてピンにマウントし接着。これらをロボットで自動化。レーザにより、結晶の分割といった手術も可能。フィルムに小さな穴を開けて余分な溶液を除去したり、cryoprotectant やリガンドを拡散させることも可能という。大量の微結晶を含むドロップをマイクロビームで連続的にスキャンして、そこからデータセットを再構成する serial crystallography も紹介されてた。昨日 @yam_cpp 氏の紹介していた複数格子への対応ソフトは、こういう用途も想定しているのかも。
ただ、例が thaumatin とか lysozyme とか、いわゆるモデルタンパクばかりだったのがちょっと。質疑応答でも突っ込まれてたけど。
Application: 'Invisible' Crystals: strategies for Locating, Centring and Collecting Data Using Micrometre-sized X-ray Beams (Joseph Lyons)
75分目くらいから。
特に目新しい情報はないが、Diamond Light Source の grid scan の様子が分かる。でも、構造クラスタの皆さんは、実物を触ったことあるよね。
Application: Serial Femtosecond Crystallography of Membrane Proteins Using the Lipidic Cubic Mesophase (Dianfan Li)
90分目くらいから。
始まる LCP の SFX への応用(Caffrey グループ)は必見。DAGK の実例もあり。LCP は粘性が高いので、流速を落とせる(→蛋白質の使用量を減らせる)のが利点らしい。可溶性蛋白質の結晶も LCP に混ぜることで消費量を減らせるのではないかというような質疑もあった。
なぜ溶液の場合でも単純に流速を落とせないのかはよく理解できなかった。ゆっくり過ぎると途切れちゃって連続した liquid column にならないってことかな? それでも別にいい気はするんだけど。FACS みたいに droplet を1つ1つ測定するようなイメージで。
Application: Establishing in situ diffraction as a structure determination technique (Robin Owen)
110分ごろから。
Diamond Light Source I24 ビームラインでの in situ 測定の発表。これも、大量の微小結晶からマージするとか、serial でやるとかを追求してるっぽい。
大量のデータのマージは、全部マージ→ Rmerge が高いバッチを除外というのを、completeness と Rmerge の納得できるトレードオフ地点まで反復する。BLEND というソフトも開発中とのこと。なんで CC を使わないんだろう。この手法で膜タンパク質の in situ 常温データ収集に成功したといって、構造も出ていた。 MPL だしメンバ的に ASBT かなと思ったけど、ちょっと違うっぽい?
放射線損傷には total dose だけじゃなくて dose rate も效いている(速いほうが有利)。また二相性の kinetics があるとのこと。
日曜日第1セッション (プログラム上は Session 4 - EM)
Introduction: Use of combined EM and x-ray analysis in structure determination (Helen Saibil)
1つ目の講演。電顕のブレークスルー:
- 電子銃の改良
- 電子の直接検出器
- Zernike位相板による位相コントラスト
Method: Analysis of Heterogeneous Macromolecular complexes (Elena Orlova)
20分ごろから。
ヘテロな集合体からの三次元再構築について。詳細はよく理解できなかったが、参照となる画像を用いるか用いないかで a priori 法と a posteriori 法があって、前者では eigenimage がキーワードらしい。
Method: What X-rays cannot do: single-particle imaging, molecular tomography and the dawn of high-resolution cryo-EM (Werner Kühlbrandt)
52分ごろから。
ここ数年間の単粒子解析の著しい分解能向上には、高速な、電子の直接検出器の登場が貢献しているらしい。
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- 「ぶれ」が少ない画像が撮れる
- フレーム間で動きを求めて補償できる
- 電子線損傷の少ないフレームを選択できる
- 動きの少ないフレームを選択できる(露光開始直後は損傷の点では有利だが、動きが大きい)
67分目あたりで、昨年12月の TRPV チャネルの仕事(これとこれ。単粒子解析で3.4Å!)に言及しているが、「あと数週間で、同じくらいすごいのが来るよ」と予告してる。なんだろう。すごく楽しみ。
Application: Utilising crystallographic tools for the interpretation of high-resolution EM data (Alan Brown)
88分ごろから。
リボソームの電顕マップへ Coot と REFMAC でモデリングと精密化。どちらも電顕向けに機能追加したとのこと。
単粒子解析で得られたマップへ de novo にモデリング・精密化する時、Rfree に相当するものがないと困るので、FSC gold standard (0.143)よりも高分解能領域で、精密化に使わなかった方の map との相関が急速に悪化しないことを確認して過適合を抑えているらしい。
精密化に使った分解能(FSC 0.143の地点)までは、もともと half set 間で相関が強いわけだから、その部分は検証に使えないということかな? 高解像度領域でしか確認できなくていいのかなという気もする。
そもそも、FSC gold standard の 0.143 の由来とか、電顕 map の local resolution の定義を全く知らないので、そのへんを勉強したい。
日曜日第3セッション(Session 6 - Drug Design)
Method: Search and identification of binding pockets and screening in drug design (Judit Debreczeni)
55分ごろから。
1データセットを2分で収集し、3週間で設計→合成→複合体構造のサイクルを回す。やはり企業はスピードが全然違う。
私は3年ほど前、「おそらく製薬企業は GPCR の構造を人海戦術で解きまくってると思うけれど、だからといってアカデミックな人が解くことの意義がないとは言わない。構造を public にすることにも意味があると思うので」とか書いたけど、こういう講演を見ると、うーん……となる。