2023-12-11 (Mon)

読んだ

  • ASCII "ロードマップでわかる! 当世プロセッサー事情 第 749 回 生成 AI 向け GPU「Instinct MI300X」は NVIDIA と十分競合できる性能 AMD GPU ロードマップ"
    HBM3 メモリの速度は、まだ仕様上の上限に達していないということを知った。

  • Nature "A Numerical Method for Two-dimensional Fourier Synthesis" ReadCube
    この時代(1936) の Nature は非常に簡素で読み取りにくいが、下の解説記事に具体的な説明がある。それによると、二次元の逆フーリエ変換 (h, k) → (x, y) を計算する際、三角関数の和積公式で展開して式を整理することと、事前に計算しておいた strip を利用することで、今風にいうなら計算量を O(hkxy) から O(2hx + 2hky) に減らせるという工夫のようだ。一見するとあまり変わっていないように見えるが、前者は三角関数表から値を拾って積和計算なのに対して、後者の 2hky の部分は必要な値がすでに並んだ strip を加算するだけなので、値を探す手間が省けるし掛け算も不要。したがってヒトが手計算する上では大きな効率化だったようだ。

  • IUCr Newsletter "How did they do that? Beevers-Lipson strips"
    1928 年に William Lawrence Bragg で結晶学で世界最初のマップ計算を行ったときの自伝が引用されている。"I put these coefficients in the Fourier series, summed it up, and behold there were the calcium, magnesium, silicon and oxygen atoms clearly shown by peaks in the Fourier summation": behold というのがいい。聖書とかで「見よ」って言う時の荘厳な単語だ。このときの対象は diopside(透輝石, CaMgSiO6)。
    I feel such excitements and wonder are being lost from structural biology. Yes, the structure itself might be interesting for biologists but the act of solving a structure is becoming a dull routine. Because I am interested not in any particular proteins or chemical compounds but in the act of structure solution itself, it is getting harder and harder for me to remain motivated.

  • Nature "UK first to approve CRISPR treatment for diseases: what you need to know"
    肝心の CRISPR 操作自体は体外で行うため、骨髄移植同様の前処理などが必要になるというのが侵襲も大きくてエレガントじゃないなあ。コストもそのせいで跳ね上がっているのでは。ヘモグロビン遺伝子上の原因変異を直すんじゃなくて、胎児型ヘモグロビンの発現を抑制する BCL11A 遺伝子を破壊するというアプローチらしい。たしかにこれなら、いろいろなヘモグロビン疾患に使えるな。

  • Nature Reviews Physics "When scientists disagree" ReadCube
    手柄の取り合い、学説の衝突などなど科学者の衝突の種はつきない。

    • impertinently: ふてぶてしいほど
    • litigious: 論争好きな
    • get on: 仲良くつきあう
    • hold sway: 流れをつかむ、主流派である
  • Acta Cryst. E "Pitfalls of a structure determination: The structure of closo-9-[4-(dibenzylamino)phenyl]-1,2-dicarba-dodecaborane(12)"
    CrysAlisPro の自動処理が系統的に弱い反射を見落として a 軸を半分にしてしまったため、本来は order しているカルボランが disorder して見えた一例。とりさんも最近、共同研究者が CAP で解いた構造を自分でも DIALS で処理しなおしてみたところ、CAP の処理は c 軸が半分になっているのを発見したことがある。それにしても、こういう報告ですら生データを添付しないのはいかがなものか。

    • feign: みせかける
    • expedient: 適切である
  • Nature "‘Disruptive’ science: in-person teams make more breakthroughs than remote groups"
    これ見た経営陣が、きっと remote work やめろとか言い出すよ。なんでもかんでも disruptive である必要ないじゃんね。

  • Science "Burning Bridges"
    ロシアの科学の現状。

    • shriveled: しわくちゃの
    • abet: 悪いことを幇助する
    • swanky: 派手な
    • patina: 緑青。(比喩的に)時間をかけて形成されたもの