2024-06-23 (Sun)

大雨。昼食に出かけたときは風も強く、傘がひっくり返って壊れてしまった。関節部が錆びて弱くなっていたようで、そこが折れてしまった。かなり長く使っているもので、巻くための紐も外れてしまったのを付け替えていたくらいだから、さすがに寿命か。

読んだ

  • "VRChat で美少女になって頭をナデナデされるということ"
    触覚があるわけでもないのに、よくできるなあと思うと同時に、幸せそうでいいなとも思う。

  • 雑科学ノート "真空の話"
    自分は普段 Pa で考えているのだが、1 mmHg が大体 133.322 Pa らしい。拡散ポンプで到達する 1E-5 mmHg ~ 0.001 Pa 付近で既に残存ガスの平均自由行程が 1 m を越え、圧力差による「風」は生じず、拡散が律速になるということは意識したことがなかった。ガスボンベについている圧力計の中身であるブルドン管が、子供のおもちゃの吹き戻しと同じ原理というのも面白かった。

  • 雑科学ノート "ゼオライトの話"
    Sodalite cage の繋がり方で A 型と Y 型に分かれるとあるが、LTA 型 と FAU 型(faujasite)という言い方もあるようだ。

  • 日本結晶学会誌 "新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) スパイクタンパク質の構造解析"
    SPA と結晶学、両方やろうという結論は好印象。Spike protein の SPA はどうも分解能が上がりにくい印象。RBD に focused refinement したものでも分解能としてはあまり伸びていない。

  • 雑科学ノート "カーボンナノチューブの話"
    CNT を他の材料に加えた時にどうして有用な性質を示すのか、接続性という観点が新鮮だったし、それを活かすために分散性が大事ということもよく分かった。巻き方の分類については、ここの説明だけではよく分からないので、Wikipedia での説明なども後で読みたい。

  • 雑科学ノート "ミズカビの話"
    物性物理学だけでなく、生物系のネタもあった。自分で実験した経験があるようで、すばらしいなあ。
    なお、ミズ「カビ」とつくが、これら卵菌は今では原生生物のストラメノパイルに分類されており、系統的にも真菌類とは遠いらしい。

  • Nature "Cobalt-catalysed growth of carbon nanotubes with single-atomic-layer walls" ReadCube
    単層 carbon nanotube の最初の報告の一つ。Growth condition の最適化について可能性を示唆するだけで、実際にはやっていない。今の Nature だったら、そういうデータも全部揃えてから出直してこいって展開になりそう。昔の letter のほうが速報性が高かったのかなあ。

  • Science "Science and fiction"

    • apprehensive: もともとは「理解のある」みたいな apprehend と直結した用法だったが、最近は「心配している」「不安である」という意味になっているらしい
  • Science "A family’s sacrifice"
    博士課程進学か、妻や子供を優先するかという選択に苦しんだというエッセイだが、親の介護といった予測困難で不可避な事態ならともかく、結婚するとか繁殖すると決めたのは本人なんだから、共感しづらい。

  • Science "No longer an island"
    これについても同じ。

  • Science "New probe finds misconduct by star botanist"
    健康食品の成分が本当に宣伝されている植物に由来するのか遺伝子解析で検証するというアプローチで一躍話題になり、検査会社を作って大儲けした Steven Newmaster の 捏造疑惑。前回 Science が報道したときは、不審な点は明らかなのに、(利害関係のある)所属大学の検証チームがお咎めなしという結論を出したとして批判していたが、今回ははっきりクロ判定が出たらしい。良かった。

    • Echinacea: ムラサキバレンギク属
    • embellish: 美しく脚色する、潤色する
  • Nature "Sex organs sense vibrations through specialized touch neurons"
    Krause corpuscle という 19 世紀から知られている構造が、いわゆる性感に関わっていると判明。Clitoris には penis の 15 倍の密度あるとのこと。表面積の違いで密度が変わるだけで、全体数としては同じだったりするのかしら。

    • pique: 反目といった意味の名詞だが、動詞として使うと、そういう negative な感情だけでなく、好奇心をそそるという意味にもなるようだ。
  • Science "Astronauts face health risks—even on short trips in space"
    民間の宇宙旅行のほうが NASA などによる宇宙飛行よりも研究のチャンスがあるという理由が謎。民間の宇宙観光に参加する人には、こういう研究への協力が求められるというのは言い過ぎでは。

  • Nature "How a few days in space can disrupt a person’s biology"
    テロメアが延長するというのが謎。放射線による DNA 損傷で telomerase 活性が上がるという経路なんてあったっけ。

  • Science "A tiny, long-distance hunter"
    Lacrymaria olor という単細胞の原生生物の細胞膜は細胞骨格によって蛇腹状に折りたたまれていて、捕食時に一気に展開して 30 倍にも伸びるという。動画とかを見ないと動きがイメージしにくい。

    • bladderworwt: タヌキモ
  • 応用物理 "薄膜X線回折測定の基礎と応用"
    薄膜の PXRD について勉強した。この記事は online supplement として、各 scan の装置の動きを写した動画が掲載されているのが分かりやすかった。薄膜なのに X 線で多重散乱効果が見られるのはなぜだろう。
    単結晶回折の感覚からいうと、すべての反射を観測して指数付けして構造を解くという流れが自然だが、薄膜の PXRD だと、構造は先に分かっていて、各 2θ 値がどの指数に対応するかも分かっていて、反射を 1 つ 2 つ観測することで方位を知るということに重きがあるのかなと思った。例えば、θ - 2θ では散乱ベクトルの向きを(例えば基板と垂直な向きに)固定して長さだけを変えてスキャンするというのも、「すべての反射を観測したい」という単結晶回折の感覚とは違うなあ。θ 固定して 2θ 動かせばいいじゃんと思ったけれど、それだと基板との方位関係を知りたいという目的に適さないわけね。 試料を回転させる代わりに入射ビームを回転させるという実験系の違いにも最初は戸惑った。ロッキングカーブ測定とかね。なお、ビームと結晶を固定して点検出器を移動するのは、divergence 方向に scan しているだけであって、ロッキングカーブにならない。

  • 大阪産業技術研究所 テクニカルシート 21-30 "薄膜試料のX線回折測定"
    どうして θ - 2θ 法ではノイズが生じるんだろう。あと、「Cu (111) 面に垂直な Cu (110) 面」とあるが、この 2 つは直交しないのでは? Cu は face-centered cubic だよね?