SACLA の利用課題実験報告書まとめ

日本の XFEL 実験施設 SACLA でどんな実験が行われているのか、SPring-8/SACLA user informationのページで公開されている内容をまとめてみた。
生体高分子の結晶学に限る。コヒーレントイメージングは除外している。

"Nano-crystallography of G-protein coupled Receptors: Targets for Structure-based Drug Design" Earnest Thomas ら

2012A期
非常に興味深いタイトルだが、回折は得られなかったようである。2012A期では、まだ設備的な問題も多かったのだろう。

"De novo structural determination of amyloidogenic protein segments and ordered intracellular inclusions" David Eisenberg ら

2013B期
BinAB などの細胞内結晶からのデータ収集をしているようだ。ヨウ素を含む非天然アミノ酸による位相決定にも挑戦している様子。

X線自由電子レーザーの利点を活用した創薬ターゲット膜輸送体の高分解能結晶構造解析」島村ら

2013A期 2013B期
ABC輸送体やヒトの糖輸送体のデータ収集をしている模様。2013A 期は SFX だったのに、なぜか 2013B 期ではそうではない様子。

創薬ターゲット蛋白質の迅速構造解析法の開発」岩田ら

2012B期 2013A期 2013B期
SACLA の SFX グループ本家。LCP インジェクタが動くようになったらしい。京都大学岩田研究室のサイトによると、水蒸気飽和ヘリウム雰囲気下で実験することで、乾燥による LCP の相転移を抑えているようだ。興味深いのは、サンプルを循環させることでサンプル消費量を抑えるデバイスも試していること。

蛋白質が1つ解けたとのことなので、論文が楽しみである。

「無損傷タンパク質結晶構造解析による生体エネルギー変換過程の可視化」吾郷ら

2012B期 2013A期 2013B期
巨大結晶で1ショットごとに移動しながらデータを収集する方法で、無損傷データ収集を狙っている様子。Photosystem II と Cytochrome oxidase でデータ収集をしている。後者はHirata et al, Nature Methods (2014)になったものだろう。