結合電子のモデリング

蛋白質では結合電子が見えるような超高分解能(0.8Å以上)にはそうそうお目にかかれないが、低分子の場合は普通である。

通常の蛋白質の場合は、化学結合による電子の再分布を無視する Independent Atom Model (IAM) を採用している。電子の再分布を考慮するモデルとしては、Hansen と Coppens (Acta Cryst. A. 1978) による multipolar model というのがあるそうで(原著論文をまだ読んでいない)、原子核に球対称な電子に加えて、結合による非等方的な電子を球面調和関数の和で表した項が入っているという。ただ蛋白質の結晶を対象にするにはパラメータが多すぎるのが難点ということで、P. Afonine らが、球対称な原子に加えて結合位置に InterAtomic Scatterer (IAS) を置くモデルを考えて Phenix に搭載しているようだ。CCP4 Newsletter 41 の記事を参照。

一方、multipolar model でいろいろ頑張っているグループもあるらしい。http://www.crystallography.fr/crm2/fr/labo/equipes/emqc/PublicationXtal.html など。