回折斑点の位置と形は何で決まるか

回折斑点の位置は何で決まるか。逆に言えば、回折斑点の位置から指数付けをするには何が必要か。

  1. 結晶の向き
  2. 格子定数
  3. 検出器の位置
  4. X線ビームの波長と向き

1, 2 は、いわゆる orientation matrix で表現される。MOSFLM では、1は回転行列U、2は逆格子の基底ベクトルとしてB行列。4 は入射ベクトル(波数ベクトル)。

空間群は関係ない。空間群のうち、並進成分を除いたもの(=点群)は回折強度を決める。並進成分(センタリング、並進操作、らせん成分)により、systemic absence が生じるが、それは「回折斑点があるが、強度が0である」として扱う。――いや、センタリングの場合は指数が変わるけど、それは人間の都合であって本質的ではない。#←ごまかし!

理想的な結晶と理想的なビームでは、回折斑点は無限小の「点」である。実際の回折スポットが有限の大きさを持つ理由は以下の通り。

  1. beam divergence ビームの非並行性 (= Ewald 球の中心に広がりができる)
  2. energy spread 単一波長でないこと (= Ewald 球に厚みが生じる)
  3. mosaicity 結晶のモザイク性 (= 逆格子点に大きさが生じる。異方性があれば、回転楕円体になる)
  4. shape transform 結晶の大きさが無限大でないこと

4 について詳しく述べる。単位格子1つ分の電子密度のフーリエ変換は連続関数である。結晶は、単位格子がグリッド上に繰り返されたものなので、全体の電子密度は単位格子の電子密度とグリッドの畳み込みとなる。これをフーリエ変換すると、単位格子の電子密度のフーリエ変換とグリッドのフーリエ変換(shape transform)の積になる。無限に広がる格子のフーリエ変換は同じく規則正しい点の集まりであるが、途中で打ちきった格子のフーリエ変換では、非整数の指数に対応する fringe が出現する。この影響はマクロな結晶では無視できる程度だが、格子が10個未満のような超微小結晶から XFEL などの強力かつ空間的にコヒーレントなビームによってデータを収集する場合に顕著となる。