Parseval の定理の結晶学での意味

たぶんどんな教科書にも書いてあることだが、先日、やっと腑に落ちたのでメモ。

パーセバルの定理 は、フーリエ変換後のノルムと、元のノルムが一致することを表す。すなわち、

|f(x)| = |FT(f(x))| = |F(X)|

ということ。

結晶学では、f(x) は実空間における電子密度\rho(x)、F(X) は構造因子 F(h) であって、

|\rho(x)| = |F(h)|

となる。さて、フーリエ変換の線形性により、

|\rho_{calc}(x) - \rho_{obs}(x)| = |F_{calc}(h) - F_{obs}(h)|

が言える。これは、実空間での精密化 (real space refinement) の結果と逆空間での精密化が一致することを保証する。

ただし \rho_{obs}(x)F_{obs}(h) の計算において、観測した強度とその時点でのモデルに由来する位相を結合したものを用いると、(未知の)「真実の構造」との差が最小化されるのではなく、モデルバイアスを含んだ偽の構造に向けて精密化が行われることになってしまう。これを防ぐためには、上のようなノルムを目的関数として最小化するのではなく、ベイズ主義的な取り扱いが必要となってくる。これが精密化のブレークスルーとなった。