承認欲求

「承認欲求と見捨てられ不安の塊で、依存してばかりいる女の子」というのは、臨床心理学の本をひも解くまでもなく、お馴染みの類型である。私もそういう人を見たことがある。当時は「どうしてこの人はこんなに人目を気にするのだろう、他人が必要なんだろう」と理解できなかったのだが、ここ1年ほど自分自身の精神が安定を欠くようになって、始めて、その心理状態が少し分かったような気がした。不安が強いから、「大丈夫だ」「君は正しい」と言ってくれる誰か/何かが欲しくなるのである。###説明不足

私はもともと予期不安が強い質で、高校の2・3年の頃、一つの精神的危機を迎えたのだが、大学に入ってから学問という楽しみを見出して安定した経緯がある。今思えば、学問とは体のよい逃避先だったのだろう。「○○を勉強しています」と言う学部生を褒めてくれる人はいても、批判する人は皆無だからだ。「机の上の勉強も結構だが、バイトするとかサークル活動をするとか、社会勉強も大切だ」という人もいるだろうが、「学生の本分は学問である」と大義名分を振りかざして聞く耳を持たずにいればよかった。講義の後で先生に、「最近○○を勉強しているのですが、今の講義で出てきた××と関連があるように感じます」とか「△△について興味があるのでもっと教えてください」と言うと、先生は実に嬉しそうに語ってくれたし、「いい質問です」とか「そこまで勉強してるのは偉いね」と褒めてくれることも多かった。その時は自分の知識が広がっていくことの快感に酔いしれていて微塵も考えなかったことだが、心理学的に言えば、承認欲求を満たすという動機も少なからず含まれていたように思う。

典型的な思春期・青年期の心理発達としては「大人は何もわかってくれない、同世代の仲間からの承認を得たい」という段階があるのが自然なのだろうが、私にはそういう段階がなかった。むしろ、同世代を馬鹿にしていて、年配者からの承認を得ることを望んでいた。###未完